「能」に用いられる装束の一つに「水衣(みづごろも)」と云われるものがある。広袖で身丈は膝位で無紋のもの。これは室町時代に現れた特殊の装束だが、「能」では、小袖の着流しの上につけるのが庶民の姿とされ、角帽子(すんぼうし)をかぶり、小袖に白大口袴をはいた上に、あるいは小袖着流しの上にこれをつけるが、この場合はいづれの時も僧形の姿とされる。僧形の際.袈裟をかけることもあるが、かけない時もある。
この水衣は、庶民服が遊行称名する時宗の人達によって、網衣[阿弥衣]と称され、僧服と昇華して行ったものである。
庶民の芸能から武家の式楽となった「能」にも、同じ意味で用いられるに至ったと思われる。
この角帽子、小袖、大口、水衣の僧形は「能」のワキとして用いられることが多い。 |