(1)
御簾の跳ね上がった様子を上から捉えてみた。女三の宮が着ている細長という衣裳は前と後ろが分かれており、どちらも裾を細く長く引く形となっている。
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(2)
簀子を逃げ走る首紐のつけられた小猫。この紐が御簾に引っ掛かり…。簀子から降りる階に夕霧の着ている衣裳の一部が見える。
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(3)
手前の女房は「二つ色」重ねの袿に「氷重」の表着。奥の女房は「紅の匂」重ねの袿に「梅重」の表着を着ている。
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(4)
女房達が廂の端近くに寄って、御簾の内から蹴鞠に興じる若者達を透かし見している。
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(5)
女三の宮は紅梅重ねの袿の上に、「櫻襲ね(表:白、裏:白)」の細長を着ている。御簾の下には今にも走りだそうとしている猫の姿が見える。
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(6)
藤色の狩衣を着た若者がちょうど鞠を蹴り上げた。簀子には源氏、蛍兵部卿宮が座し、高欄から身を乗り出して見物している。
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(7)
桜萌黄色の狩衣を着た若者が、藤色の狩衣の若者が蹴った鞠を打ち返そうと待ちかまえている。階上、御簾の中からは女房達が蹴鞠の様子を見物している。
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女三の宮の住まう寝殿西面を向いて座る柏木。香色の直衣は小葵文様。下には藤唐草文様の濃蘇芳(赤紫)色の下襲を履いている。
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(9)
女三の宮の足下には小猫を追いかける猫の姿。小猫の首紐によって御簾は引き上げられ、宮の姿が夕霧と柏木の前にあらわとなる、その瞬間である。手前に写っているのは簀子の高欄である。
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(10)
女三の宮は蹴鞠に興じる若者達を眺めるかのように、部屋の端近くたたずんでいる。高貴な身分の女性が外から見透かせるほどの場所に、しかも立っているということは当時としては行儀の悪いこととされていた。女三の宮の稚なさが表れ出ている場面である。
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(11)
柏木は夕霧の背後に見える御簾が猫によって引き上げられたことに気付いた。簀子には逃げ走る子猫の姿がみえる。
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(12)
柏木は御簾内に立つその女性が、着ている衣裳(細長等)から女三の宮その人だと確信する。女三の宮の姿は柏木の、脳裏にくっきりと焼き付けられることとなる。
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(13)
逃げ出した小猫の首紐で御簾がはね上げられたその瞬間の女三の宮の位置から見た眺めである。階にはこちらを向いて柏木、背を向けて夕霧が座している。
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(14)
宮は夕霧と柏木の姿に気を留めていなかった。これは隣の御簾から見た柏木の姿である。これぐらい近ければ女三の宮も自分の姿が見透されない様に気を配ったかもしれない。
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現在、蹴鞠を行う正式な施設を「懸」と言い、四隅に4本の樹(東北:桜、東南:柳、西南:楓、西北:松)を植え、その中で儀式を行うが、ここでは桜の一木を懸かり樹として選び、蹴鞠を行っている。
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(16)
当時の装束には特に規定はなく、束帯姿・直衣姿でも蹴鞠を行った様である。ここでは狩衣に指貫をはき、足には皮製の烏皮沓を履いているものと思われる。
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蹴鞠で使われる鞠は鹿皮製で半球状の皮を真中で2枚縫い合わせたもの。(真中が少しくびれたようになっているのはそのため。)中は空で、蹴り上げると紙風船の様に空気が入って弾力を生じる。
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蹴鞠は当時の生活の中では、馬術を除くと数少ない身体を動かす競技である。動くうちに衣服も乱れ烏帽子も乱れてくる。写真の下側には階に腰掛けて休んでいる柏木中将の姿がみえる。
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廂には外から内部が見透かせない様に御簾が降ろされている。写真は、御簾を通して眺める時と、御簾を通さない時とが分かりやすい様にしてみたもの。
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御簾を通して蹴鞠の様子を眺めるとこの様に見える。「御簾」は細かく割った竹を絹糸で編んで作られており、女性達がいる場合等は降ろされるが儀式等の際は上に巻き上げられた。
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跳ね上がった御簾の内に、女三の宮の姿を見つけた柏木。その瞬間の柏木の姿を逃げ走る猫の目の位置から見たもの。
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逃げ走る小猫から女三の宮と大きめの猫の方を振り返って見た光景。
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大きめの猫に追いかけられて逃げる小猫。猫は当時から貴族の間で愛玩動物となっており、日本猫は尾が短かくてポンポン(飾り房)の様になっている。
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女三の宮の足下にいる猫。目では逃げ去る小猫の姿を捉えている。
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