冷泉(れいぜい)家の乞巧奠(きっこうてん)
藤原俊成、定家の末裔で、和歌の家として続く京都の冷泉家では、今なお王朝の名残をとどめる七夕行事、乞巧奠が催されている。
旧暦七月七日の夜、庭に、祭壇「星の座」が設けられる。四つの机が並べられ、海の幸、山の幸がそれぞれ皿に盛られて並ぶ。品目は、「うり(瓜)なすび(茄子)もも(桃)なし(梨)からのさかづき(空の盃)に ささげ(大角豆)らんかず(蘭花豆)むしあわび(蒸蚫)たい(鯛)」と、冷泉家らしく一首の和歌になっている。いずれも二組で、それぞれ、彦星(ひこぼし)と織姫への供え物という。
五色の布と糸 |
和歌の書かれた梶の葉 |
また、二星に「貸す」ための琴や琵琶(びわ)が並び、さらに五色の布や糸、花瓶に活けられた秋の七草が華やかな色を添える。水を張った角盥(つのだらい)は、星を映して眺めるためのものという。和歌の門人達が七夕にちなんで詠んだ和歌の短冊が供えられ、七夕に縁の深い梶(かじ)の葉が、諸所に吊される。
祭壇の周りの九つの燈台(とうだい)が灯される頃、座敷では管絃の遊びが始まる。本来はその前に蹴鞠(けまり)があったという。そして二星に手向けられる和歌を朗々と読み上げる「披講(ひこう)」があり、つづいて参会者の男女が、間に敷かれた白布を天の川に見立てて向かい合わせになり、彦星と織姫になって恋の和歌を贈答する。こうして、冷泉家の七夕の夜は更けてゆく。
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